【Book】もう秋?夜長に味わう、おすすめ北欧本3冊

もい。8月も残り一週間となりましたが、みなさまいかがお過ごしですか?暑さに弱く静寂を愛するキートス!一味(とげ丸&ほしの)は、秋の気配に耳を澄ましつつ、読書にふけってばかりおります。
北欧本が続々と発売された今年の夏。今日はその中からおすすめの3冊をご紹介しますね。北欧本って供給過多気味ではあるのだけれど・・・この3冊は、本当に良い!GENSEN(厳選)本です。

<2015夏-秋GENSEN北欧本3冊>

1. 『カウニステのデザイン 北欧テキスタイルブランドの新しいかたち』(2015/7/23発売)
2. 『北欧とコーヒー』(2015/7/30発売)
3.  『国家がよみがえるとき / 持たざる国であるフィンランドが何度も再生できた理由』(2015/6/15発売)

1. 『カウニステのデザイン / 北欧テキスタイルブランドの新しいかたち』
はっきりいって、とても丁寧で誠実な本。ブランドの商品写真を並べただけの、「イメージ写真集」とは一線を画します。ブランドの思想、設立に至るストーリーに加えて、デザイナー1人ひとりのこれまでのキャリア、仕事場や住まい、週末の過ごし方といった細部までを取材し、「カウニステ」という世界を立体的に伝えています。「カウニステ」の美しいテキスタイル写真もふんだんに配置され、1ページ1ページ、めくるごとに、違った角度から「カウニステ」に出会うことができます。すべてのページ、すべての段落にときめくような新鮮さがある本です。

「カウニステ」は、日本人の原田浩行とフィンランド人のミッラ・コウックネンの2人が2008年に立ち上げたブランド。本書の中の原田さんの言葉によれば、「新鮮で、誠実で、アーティスティックであること」が「カウニステ」というブランドの定義だといいます。まるでそのブランドの定義に呼応するかのように、構成されたこの一冊。

クリエイティブな仕事に携わる人なら、本書に登場するデザイナーたちの話からインスピレーションを得ることができるでしょう。北欧デザインに興味がある人なら、「北欧デザインの背景にあるもの」(作り手の思想や、制作過程、北欧のライフスタイルなど)をのぞき見することができます。思い思いに楽しんでみてください。

北欧とコーヒー
By 萩原 健太郎

2. 『北欧とコーヒー』
旅行にそなえておすすめの現地カフェをたくさん知りたい、という理由だけの人は、焦って買わないほうが良いかもしれません。「北欧カフェ案内」は、全部で6つしか掲載されていませんし(本文中で触れられているお店を含めればもう少し多くなります)、紹介されているラインアップは以下の通り、若干のスウェーデンより。もし、ノルウェー旅行やフィンランド旅行や、アイスランド旅行を計画中でしたら、「カフェ案内」としてはご期待に添えない可能性があります。地図などもついていません。
■紹介されている現地カフェ:
・FUGLEN(ノルウェー)
・The Coffee Collective(デンマーク)
・Freese Coffee(フィンランド)
・Johan & Nyström(スウェーデン)
・Drop Coffee(スウェーデン)
・Cafe Valand(スウェーデン)

しかしながら本書は「場所巡り」よりも、コーヒーとその周辺にあるものを静かに散策するような本です。あるいは、おもちゃ箱の中をあさって宝石を探し当てる感覚に近い。コーヒーの周辺には、ヴィンテージ・カップ&ソーサーがあり、フィンランドのアキ・カウリスマキ監督映画があり・・・・・・何より、コーヒーを愛する北欧の人々の思いがあります。この本はそういった「かけら」たちを教えてくれます。この本を読んだあとでは、コーヒーの匂いがした街角で、オフィスで、リビングで、ふと「かけら」を思い出して、思わずにんまりしてしまうはず。

ちなみに、本書は東京吉祥寺の「Cafe Moi(カフェ モイ)」など、日本にある「北欧(ゆかりの)カフェ」についても少し紹介されています。そこから「日本人と北欧コーヒーの出会い」に思いをはせてみるのも一興。日本で北欧系カフェを営む人々のストーリーを読むと、その方がどのようにして北欧のコーヒーに出会い、感銘を受け、日本でのお店開業に至ったのかということがよく分かります。それを知ると、日本でのコーヒー一杯、現地でのコーヒー一杯のありがたみが増しそう。

3. 『国家がよみがえるとき 持たざる国であるフィンランドが何度も再生できた理由』
北欧本としては少し異色?フィンランドの研究者たちのエッセイ(論文)を集めた本です。フィンランド社会に関するフィンランド人の自然体の考察を知りたい人にとっては、貴重な書。11本の論文が収録されています。
自然体の考察”、というのが重要で、よくある「ことさら北欧賛美」的な論調の日本語の記事からは知ることができない、フィンランド社会の凹凸、光と影、を垣間見ることができます。ただ、論文1本1本の、読みやすさにばらつきがあったり、全体としてつながりが精巧に編成されているわけではないので、興味があるトピックを拾い読みする、くらいの気持ちで手に取るのがおすすめ。
「アングリーバード」のRovioや「クラッシュ・オブ・クラン」のスーパーセルなど、グローバルなITベンチャーを生んでいるフィンランドの「起業を生み出すエコシステム、社会的土壌」に興味があった私には、第四章「起業大国フィンランド」が特に有益でした。とりわけ、「想像力専門家」という肩書きのユッシ・T・コスキ氏のこんな言葉に感動したのですけれど。

 


「きみが果物売りばで唯一のバナナだたとしても、自分がバナナであることに信念を持て。オレンジがマジョリティとして売り場を占拠しているからといって、オレンジ色になったり、丸くなったりするな。(中略)きみの創造性を支える基礎となるのが、きみ自身のアイデンティティであり、バナナであることなんだ」

(『国家がよみがえるとき 持たざる国であるフィンランドが何度も再生できた理由』マガジンハウス より引用)

コスキ氏はこの、「自分自身のアイデンティティこそが創造性の基礎」という考えについて、なんと日本人、村上春樹氏の言葉を引用しながら補足し、論文を締めくくっています。(コスキ氏の大好きな作家の一人なのだそう。具体的にどんな言葉を引用したのかは、読んだ人だけのお楽しみ・・・)
フィンランド人の論考に、日本人の言葉が引き合いに出されるなんて、興味深いことです。しかし、どうでしょう?日本は「きみがバナナであること」を大切にする社会かしら?・・・と考えてみると、私は、悲しくも疑問です。学校や会社で、「私が私であること・あなたがあなたであること」が軽視される、踏みにじられるような場面ってありませんか?
もしそんなことに共感する人がいたら、ぜひこのコスキ氏の文章だけでも、読んでみて下さい。

そんなこんなで、この3冊。カウニステは日本人がフィンランドで立ち上げたブランドで、「北欧とコーヒー」には北欧コーヒー文化に出会った日本人の姿があり、「国家がよみがるとき」には日本人作家の思想に影響を受けた論考があり。様々な分野における、「日本と北欧の交わり」が感じられる3冊でありました。早くも秋の夜長に向けた本を探している方、ご参考になれば幸いです。(ほしの)

写真左:『カウニステのデザイン 北欧テキスタイルブランドの新しい形』より。デザイナーのワークスタイルに迫る。 /写真右:『北欧とコーヒー』より。ビンテージ・カップ図鑑にうっとり。